2017年02月05日

謝意







「…悪かったな」



その一言で、黒川の謝罪は終わる。
多少の手違いでイツキが他の男に渡され、一晩、好きに扱われたとしても
その程度なのだ。

イツキはベッドの上で毛布に包まり、顔だけ出して黒川を見上げると、またすぐに毛布に戻る。



酒の席ではつい営業笑いを浮かべてしまうのも、うっかり飲み過ぎてしまうのも、自分が悪い。
『もう話はついているから』と手を引かれ、簡単に個室に連れ込まれてしまうのも、自分が悪い。
始まってしまえば、あっという間に飲み込まれて…、嫌がる言葉も素振りも嘘で、ただただ、目の前の男を悦ばせるための器になってしまう身体も…

自分が悪いのだけど、でも、それはほんの少しで

多分、残りのほとんどは、黒川が悪いと思うのだけど。



『俺の不注意でまた辛い目に遭わせたな。…済まない、イツキ』
と、そんな言葉は貰えない。
仮に貰ったとしたら、きっと、泣いてしまう。
そう、想像しただけでも、涙が溢れる。




黒川の手が、毛布の上から、イツキの頭をぽんと叩く。

イツキが再び毛布から顔を出した時には、黒川の姿はそこには無かった。



posted by 白黒ぼたん at 23:28 | TrackBack(0) | 日記
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