2017年02月08日

頃合






廊下の向こうに加瀬の姿を見つけ、イツキは、気付かなかったフリをして目を背けるのだけど、
独特の、舐めるような視線を感じ、つい、顔を上げてしまう。
加瀬はニヤリと笑い、ちょいちょいと手招きをするように手を振って、廊下の向こうに消える。

当然、無視して、立ち去ってしまっても良いのだが、
どうせ絡まれるのは、遅いか、早いかだけの問題。






「君はさ、進路、どうするの?…この間、資料室にいたけど?」
「……別に、まだ。……決めてません……」
「まだって、もうこの時期だよ?……ああ、縁故で就職って言ってたんだっけ?……西崎くんのトコ?」


壁側に並んで立ち、そんな話をしていると、まるで普通の教師と生徒のようだった。
実際、回りには他の生徒たちも歩いているのだから、そう、変な話は出来ない。


「…西崎さんの所は…、無いでしょ? ……西崎さんが何をしてる人か、知ってるんでしょ?」
「売ったり、買ったり、回したり…。…君みたいな子が仕事するには、丁度良いじゃない? 得意でしょ?」



解っていて、加瀬はそう言って、馬鹿にしたような蔑んだ目でイツキを見下ろし、くすくすと笑う。



「まあ、今度、ゆっくり話しましょう。イロイロ。……西崎くんに、また一席設けて貰うからさ。
…そこで、ゆっくり……ね?」



それだけ言うと、加瀬はじゃあねと手を上げて、そのまま向こうに行ってしまった。
この場で何かは無いだろうと思っていたイツキだったが、何事も無さ過ぎて、拍子抜けしてしまう。


それでも、加瀬の問題は、
そろそろ、どうにかけじめをつけなければいけない頃合いだと
さすがに思っていた。



posted by 白黒ぼたん at 23:34 | TrackBack(0) | 日記
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