2017年04月12日

朝の教室・5





終業を告げるチャイムが鳴る。
廊下の向こうが少し賑やかになる。
じきにこの教室にも、人が戻って来るだろう。


「……先輩。……大丈夫ですか?」


どこか虚ろ気で、試すような、からかうような…そんな言葉ばかりを並べる清水を、イツキは無邪気に気遣う。
疲れているのかも知れない。美和との恋愛に悩んでいるのかも知れないと、単純に思う。
その悪意の無さが、また他の問題を呼び込むとも知らずに。


「……先輩?」
「…俺、お前のこと、マジで好きだったんだぜ?…イツキ」
「………あ」


薄く笑ったままそんな事を言われては、本気なのか、まだ、からかわれているのか区別がつかない。
それでも、嫌な気はしない。イツキは今度は耳まで赤くしてしまう。



「俺も。先輩のこと、好きでしたよ。本当に」
「…いつまで?」
「え?」

「……オヤジん所で、オヤジとセックスした時は?……まだ好きだったって事?」






一瞬、
清水の言葉の意味と、モノゴトの時系列と、自分が隠さなければいけなかった感情が、イツキの頭の中で渦巻く。
清水の事は軽い遊びだったのだと、最後まで言い通せなければ、あの時の辛い別れに意味が無くなってしまう。



「……まー、知ってたけどな……」



狼狽するイツキを他所に、清水は手を引き、席を立つ。
それと同時に、教室に、ガヤガヤと他の生徒が入ってくるのだった。



posted by 白黒ぼたん at 22:00 | TrackBack(0) | 日記
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