2017年04月17日

はやり病・3







「なんだ、黒川さん、いないじゃん。やっぱり嘘か」



近隣の視線にイツキの手が一瞬緩んだ隙に、清水は、とうとう部屋に滑り込む。
困る、イツキを他所に上がり込み、部屋に誰もいない事を確認すると、ふふと笑う。



「……これから、……来る予定。……先輩、本当、…駄目です…」
「ふーん。……まあ、本当、少し話したいだけだよ。……すぐ、帰るよ」



本当は、今日は黒川が来る予定はないのだけど、それも嘘なのかどうかは、清水には解らない。
どちらにせよ、ここにはあまり長居しない方が良いのだと、思う。

思っていても、どうしても、イツキと二人きりで話がしたかった。



清水はリビングの入り口に立ち、部屋をぐるりと見回す。
イツキはまだ玄関近くに立ち、清水と距離を取る。
……もし、清水が迫って来たら、キッチンに逃げ込む。
……ああ、でもそれでは逆に袋小路になってしまう。
そんな事を考えながら、万が一の場面に備える。

もっとも、イツキの備えなど、役に立った試しはない。




「…イツキ」

2、3歩離れた間合いで、清水が声を掛ける。
イツキは廊下の壁にピタリと身を寄せ、恐々、清水を伺う。


「…もう少しだけ、傍に行ってもいいか?」


イツキは駄目だと言う風に、首を横に振るのだけど…、清水はゆっくりと、一歩前に出る。
勢い、手を伸ばせば、イツキに届く距離になる。



posted by 白黒ぼたん at 21:05 | TrackBack(0) | 日記
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