2017年05月13日

均衡・4








「ご苦労だったな、佐野」


随分と寄り道をして、車は黒川の事務所へと戻る。
扉の前に立つ佐野の横をすり抜け、イツキは中に入り、倒れる様にソファに寝転ぶ。

黒川は、疲れて切った様子のイツキをチラリと見ながら、佐野に、手間賃代わりの一万円札を数枚渡す。


「……あー…、社長、すんません…。……実は……」
「…いい。…構わんよ」


イツキを抱いた事の報告は、軽く、あしらわれて終了した。
佐野は、どうにも腑に落ちないのだけれど…、今更黒川とイツキの関係を疑問に思ったところで始まらない。
……しかも、自分もそのお零れに預かっているのだ…、口を出す権利は無いだろう。

金を受け取り、ぺこりとお辞儀をして、佐野は事務所を出る。
最後に見た黒川は、煙草に火を付けながら、ソファに眠るイツキを覗き込んでいた。






帰りの車の中で、佐野は、イツキを思い出す。
コトの後。ふと、何かを思い出したように、口を開く。
『仕事』と、自分と、二度の行為の後では、さすがに意識も朦朧としていたのだろう。
たどたどしく話す言葉は、寝言と独り言の合間のようなもので
佐野にはその意味が、よく解らなかった。




『…マサヤは……少しぐらい意地悪な方がいいんだよ。…そうじゃないと、俺、マサヤのこと、好きになっちゃうかも知れない。
……だから、……これぐらいが、……ちょうどいいんだよ………』

そう言って、静かに微笑み、目を閉じるのだった。





posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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