2017年05月22日

襟首






学校の食堂にはテラス席があって、天気の良い日などは解放されている。
二階にあるそれは眺めも良く、ベンチでは女子が話に花を咲かせていたり、のんびり読書を楽しんでみたり。



今日は、イツキもそこにいた。

昼休み、梶原と大野は揃って用事が出来てしまい、イツキは一人で……
……ランチセットを頼む気にならず、紙パックのコーヒーだけを買い、テラス席に出てみる。

生憎ベンチは一杯だったので、バルコニーの手摺りの隅に身体をあずけ、ぼんやりと外を眺める。
中庭には、名前の解らない花が咲いている。暑くもなく寒くもない穏やかな陽気。
紙パックのストローを咥えながら、幸福そうな光に満ちた景色を見渡し
どこからか聞こえる誰かの、楽し気な笑い声に、耳を傾ける。


そうすれば、するほど

逆に、自分の中の、暗く陰鬱な部分が、浮き彫りになる。

例えば昨日、自分が、した、コトの内容を思えば

自分は、こんな明るい世界にいてはいけないのではないかと、思う。







「……イツキッ」



突然、襟首を掴まれ、身体が後ろに引っくり返りそうになる。
慌てて顔を向けると、それは梶原だった。
梶原はイツキをバルコニーの手摺りから引き離し、代わりに、自分の身体を間に挟む。


「バカ、お前、落ちるぞ!?」
「………梶原?………落ちないよ?」
「いや、だって、お前、…なんか、ぼんやりして…、ふわふわしてっから…」


どうやら遠くからイツキを見掛けた梶原が、イツキの様子が危なっかしいと、慌てて駆け込んで来たのだった。

けれど、どうやら取り越し苦労だったと解ると、梶原はイツキから手を離し、照れ臭そうに笑う。


「…あー、ごめん。……俺、なんか、慌てちゃって……」
「……大丈夫だよ。……落ちないよ」


イツキはもう一度、そう言って、静かに笑った。





posted by 白黒ぼたん at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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