2017年05月23日

気掛かりな事







夜。
梶原は一人、自分の部屋で今日の課題を片付ける。
三流私立高校からトップ校への受験を控えているというのに、予備校にも行っていない梶原は、ただただストイックに自分にノルマを課す。
それは簡単なようで、難しく。強い意志を持って、遂行されるもので。
それでも、おそらく、成し遂げられるだろうと、回りも、本人も思っていた。


気掛かりといえば、一つだけ。


勉強も一段落し、梶原は机から離れ、伸びをする。
立ち上がり、台所へ向かい、冷蔵庫から炭酸飲料のペットボトルを取り、ラッパ飲みする。
口元をぬぐい、小腹が空いたと、夕食の残りの唐揚げを手で摘み上げ、頬張る。

そして、イツキの事を考える。




昼間、バルコニーで見かけたイツキは、脆く、危うく、儚な気で…本当にあのまま、手摺りから零れ落ちてしまいそうだった。
咄嗟に襟首を掴んで引き寄せたものの、思った以上に身体は軽く、弾みで、自分の胸に飛び込んで来た。
『大丈夫』と言って微笑む様子は、笑顔というよりは、泣き顔に近くて
自分と同じ男子高校生だというのに、どうやって生きて来たらこんなに切ない佇まいになるのかと、疑問を通り越して混乱する。



「………あー、ヤバイヤバイヤバイ……」



物思いの最中で、梶原はわざと大きな声を出して、頭を激しく左右に振る。
このままイツキの事を考えていると、身体が暴走してしまうことは、経験上、知っていた。
もう一度、ペットボトルを煽り、「…課題、課題。あと3ページ分…」と言い聞かせるように一人ごち、机に戻る。



当然、その後の勉強など、出来るはずも無かったけれど。





posted by 白黒ぼたん at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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