2017年06月17日

図書室の二人






「もう、イツキの事は気にすんな。お前、それどころじゃないだろう?ここからが、一番大事な時期だろう?



食事が終わり、梶原と大野は一旦イツキと離れ、図書室に向かう。
二人になるやいなや、大野が、梶原に説教を始める。


「……なんだよ、大野、急に…」
「見れば解かんだよ。イツキの事、気にしてるって。…まだ勉強、見てやってるのか?もうそんな時間、無いだろう?」
「……してないよ。したとしても、学校で…ちょこっとだけだよ。別に大した時間じゃない」



どこか不機嫌な様子の大野に、梶原は口ごもる様に答え、図書室の扉を開ける。
図書室の一角には受験生向けに様々な資料が置いてあり、大野と梶原は定期的に、これらの整理をする役目をしていた。

進学や、就職や、関連セミナーの開催告知や…そんなチラシを手にしながら…梶原は小さく息をつく。



「……あいつ。まだ進路、決めてないっぽいんだよなぁ…。なんか、このまま…ニート的な感じで…、あの男の人と一緒にいるみたいなんだよなぁ……」

「だから!…そういう事、考えるなって!……そうだとしても、それがイツキの決めた道なんだろう?だったら、放っておけよ!」



思わず大きい声が出てしまい、大野は慌てて周りを見渡す。
図書室には他に数名、自習をしている生徒がいて、皆、迷惑そうにこちらを伺っていた。

大野はバツが悪そうに俯き、手早く、手元の資料を整える。
期限が過ぎているものなどを回収し、足りないものなどは、奥の棚から補充する。



「……イツキが心配なのは解るよ。……でも今は、自分に集中しろよ。

………頼むよ」



小さな声で、大野はそう、つぶやく。
梶原がイツキを心配するように、大野も、梶原が心配なのだ。
それが解らぬほど、梶原は、馬鹿ではなかった。





posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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