2017年07月05日
曖昧
下校を促す校内放送がかかり、イツキは帰り支度を始める。
清水はしばらくの間、イツキの向かいに座り、一緒に帰ろうだ、遊びに行こうだと誘っていたのだけど、
あまりにイツキが素っ気なくするものだから、諦めて先に帰ってしまった。
食堂を出て昇降口へ向かう。
その先に、人影と、聞き覚えのある声がして、思わずイツキは壁際に身を潜めた。
「……まあ大丈夫だとは思うけどね…。書類はほぼほぼ…、順位も持ち直しているし…」
そう話していたのは加瀬で、相手は、梶原だった。
「…はい。…あの、今度の面接って、…どんな感じなんですか?」
「ウチの会長と、理事と…あと姉妹校の理事と。まあ、形だけだよ。普通にしていれば大丈夫。……だと、思うよ」
「……はい。……緊張しますね…」
加瀬は軽く笑い、梶原の肩をポンポンと叩き、向こうへ行ってしまう。
梶原は頭を下げた後、深いため息を付いて、自分の下駄箱に向かう。
そこで、下手糞に身体を半分隠していたイツキと目が合った。
「……え?……あ?……、なんでこんな時間までいるの?」
「……課題、……やってた。……食堂で……」
「食堂で?……図書室来れば良かったのに、俺も、大野も…さっきまで……」
「うん。……まあ、……うん、平気……」
イツキは自分の下駄箱から靴を出しながら、そう
曖昧に答えて、曖昧に微笑むのだった。
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最近のコメント
イツキ君が、付箋に願い事を…
どうせ雨だろうし、しかも水性で書いちゃうから、流れちゃう。
何て書いてあったのか。
たった数行で、泣かされてます。
タイトルの距離も好きだ!
今ならイツキは梶原の合格祈願を書くのでしょう。
人の幸せばかりを願う子です。