2017年07月23日

波紋







昼休み。
委員の仕事や何やらで、忙しなく動いていた梶原が教室に戻ると、
イツキは自分の机に突っ伏して、うとうと、昼寝をしているようだった。
午後の日差しがカーテン越しに、穏やかにイツキに注ぐ。
そこだけ世界が違うようで、梶原は思わず息を止めて、見入ってしまう。


別段、何の下心もない風に装って、空いていた前の席に座る。
気配で、イツキの瞼が二、三度、ぴくりと動く。



「………梶原?」
「…お、おお。……悪い、起こしちゃった?」
「寝てないよ。……半分だけ…」



半分だけ眠っていたという事なのか、意味はよく解らない。
イツキは一度目を開け、梶原を見てニコリと笑い、また目を閉じる。
顔に掛かる茶色い髪も、どこか濡れたような質感の赤い唇も、何もかもが
相変わらず、梶原の心を掻き乱す。

勉強に打ち込むためにと、距離を取ってみたけれど。
それでも無碍に遠ざけたくないのは、清水の言葉が、引っ掛かっていたからかも知れない。



「……ちゃんと昼メシ食ったのか?……食堂、まだ間に合うぜ?」
「…さっき、サンドイッチ、食べた。……玉子の…」
「そっか…」




二人の会話はそれ以上続くことは無かったけど、
午後の日差しの中、傍に座っているだけで
なんとなく、心に寄り添えているような気がした。





イツキが、好きだと、






確かな気持ちが波紋のように、梶原の胸に広がっていた。




posted by 白黒ぼたん at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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