2017年07月31日

一人の部屋






一人の部屋で明かりも付けずに
イツキは、キッチンの流しの前に立ったまま、飲み終わった牛乳のコップを洗っていた。
とうに汚れは落ち、洗剤の泡も流されていたけど
底に、少し、曇りが残っているような気がして、
出しっ放しの水の下で、コップをくるくると回す。


別に、自分が
黒川の恋人になった訳ではない事は
解っていたけど
それでも、ただの商売道具ではなくて
多少は、情がある、深い仲になったと、
イツキ自身の意思を尊重し、大切に扱い
いずれは対等に付き合える、パートナーになれるのだと


思っていたのは、勘違いだったのだろうか。



「……あ…」



気が付けば、涙がぽたぽた零れていた。
蛇口の水と一緒くたに、流れていく。
イツキは手の甲で目を擦り、蛇口の水を止め、
コップをシンクの脇に置く。



因縁のある小野寺と、再び、関係を持つことが嫌なのではなくて
そんな事に、黒川が、何も構ってくれない事が、嫌だった。



「………もう、………止めちゃおっかな……」




何が、何を、かは自分でも解らなかったけれど
独り言は、思いのほか大きな声で、誰もいない部屋に響いていた。




posted by 白黒ぼたん at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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