2017年08月06日

時間貸し






「……まあ、時間貸しみたいなもんだ。19時から21時まで、2時間。
小野寺のくだらんパーティの付き合いだ。適当に笑ってろ。
小野寺は、手は出さないと言っていたぜ、良かったな。……残念か?
まあ、気楽にしていろ。飲み過ぎるなよ?飲むとお前はロクな事がないからな」



パーティーの会場へと向かう車内で、黒川はハンドルを握りながら、助手席のイツキに話しかける。
いつもより饒舌なのは、自分でも多少、やましさを感じているからだろう。
まるでこんな事は、大した事ではないのだという風に、冗談めかし笑う。

勿論イツキがそれで安心するはずもなく。

窓に頭を預け外を向いたまま、返事もせずに、頬を膨らませている。



「ふふ、そう拗ねるなよ、イツキ。小野寺は、今だけだ。しばらく東京にいるらしくてな。
すぐに九州に帰る。その間にせいぜい、恩を売っておけ。あんなクソ男でも役に立つ」



信号待ちで車が停まると、黒川は左手を、イツキの太ももの上に置く。

イツキはそれを、すぐさま、手で払う。

一瞬、黒川が激昂し、その左手でイツキを打つのではないかと緊張感が走ったが

それは気配だけで終わる。




「……いつまでも不貞腐れるな。大人しく、行け。2時間したら、迎えをやる。

…なあ、イツキ…、これでも感謝はしているんだぜ?」


やがて車は目的に到着する。
車を車寄せに停め、黒川は取って付けたような笑顔を浮かべ、イツキに甘く囁く。



「今度、何か、してやる。……何でも。……お前の好きな事を……、な?」



それでもイツキは、そんな黒川に一瞥の視線を投げつけ、

「そんなの、いらない。迎えもいらない。俺、一人で帰る。
俺がどうなっちゃったって、知らないんだからね、マサヤの馬鹿!」

そう言い捨てて、車の外に出てしまうのだった。





posted by 白黒ぼたん at 14:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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