2017年08月22日

鼻息






翌日夕方。
一ノ宮が事務所に入ると、そのあまりの煙草臭さに、顔を顰める。
勿論、空気清浄機などは設置してあるのだが
黒川のデスクの、吸殻が山盛りになった灰皿を見れば、その限界を超えていることが解る。



「……昨夜からずっとこちらですか?……何か、急ぎの案件でもありましたか?」



部屋中の窓を開け、空気を入れ替え、デスクの上の灰皿を片付ける。
黒川は険しい顔をしてパソコンに向かっているが、どうやら、仕事をしている訳では無いらしい。

時折ケータイを覗き込み、ふんと鼻息を鳴らす。



「…西崎さんが後で寄るそうです。パピヨンの収支報告とビルの改修工事の件で。
横浜の官庁への届け出は終了したと、リーさんから連絡がありました。
あと、小野寺会長からお礼のメールと手土産が…、ヴィンテージワインでしたよ、ボルドーの……」


小野寺の名前が出たところで黒川は一瞬顔を上げ、明らかに不機嫌な様子を見せる。
そこで、一ノ宮は、だいたいの事情を察したのだけど、とりあえず黒川に追い打ちを掛ける。




「そう言えば、昨夜でしたね。イツキくん。……大丈夫でしたか?
……彼、小野寺会長とだけは、どうしても嫌だと零していましたからね。
あまり酷い目に遭っていなければ良いのですけど。
……ちゃんとケアしてあげないと駄目ですよ? 雅也」



黒川は渋い表情のまま一ノ宮の話を聞き、視線を他所に向けたまま
もう一度、ふんと、鼻息を鳴らすのだった。




posted by 白黒ぼたん at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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