2017年09月02日

4410円







『……これから仕事だから』




電話のイツキは気怠そうにそう言って、それきり。
イツキの『仕事』がどんなものなのか全く知らない訳ではない梶原は、気が気ではなかった。

学校も、普通の生活も、自分との約束も全部反故にされて、……売春…、まがいの事をさせられている。
イツキの心配以上に、そんな事をさせている、あの男への怒りがこみ上げて来た。

どうにかしてやりたいと…、でも、どうすればよいのか解らず…、足は自然とイツキのマンションに向かう。
梶原が到着した時、丁度、黒いスーツを着たイツキがエントランスから出て来る。
梶原は身を隠し、後を付いて行く。尾行するタクシーの代金がギリギリ足りたのは、ラッキーだった。




前にも訪れた事がある、黒川の事務所。

イツキが中に入ったのを確認してから、梶原も階段を上がり、扉の前まで来る。

けれど中に入るまでの勇気は、まだ、無く、扉に耳を当て、伝わる物音で、中の様子を伺う。




『……もう……嫌……っ』


切れ切れに聞こえる、言い争うような声。
イツキの、泣き叫ぶような声に、胸が苦しくなる。
やがて、ドン、ドン、と扉に振動が伝わる。

暴力を受けている、直感的に思った。



思った時には、すでに梶原は扉を開け、勢い中に飛び込んでいた。






posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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