2017年09月07日

呑んだくれ黒川







事務所の近くの赤提灯。
すでに日付は変わって深夜。
大将は店を閉めたくて黒川をチラチラと見るのだが、黒川は物憂い表情のまま、一人、コップの冷酒を飲み続けていた。



「……今日はご機嫌ナナメですね、社長」


顔なじみの大将は食器の片づけをしながら黒川に声を掛ける。
黒川はふんと鼻を鳴らし、お替りとばかり、空のコップをカウンターに置く。




「………ああ。どうせ、俺が悪いよ」
「ふふふ。いい子と喧嘩ですかい?」
「嫌なら嫌と、最初から言えばいい。……突然、ブチ切れやがって…、馬鹿が」



大将は日本酒の一升瓶をとり、黒川と、自分のコップにも酒を注ぐ。
もう他に客はいないのだし、これは長くなりそうだなと、半分、諦める。

黒川は注がれたコップを受け取り、勢い、煽る。
実は大分飲み過ぎていた。呂律も多少、回らない。



「……俺だって、考えていない訳じゃない。……まだ、イケるトコロだろう?……クソ」
「まあ、構って欲しいとか、甘えたいとか…。そんなんじゃないんですかねぇ」
「……甘えたい?………そんなタマかよ、あいつが…」


勿論大将は何の事情も知らないが、まあ、商売柄、適当な相槌は打てる。
そしてそれはあながち、間違えてもいない。



「…誰だって、いつだって思ってるんでさ。本当は甘えたいってね。……可愛いモンじゃないですか」




大将の言葉に黒川はもう一度鼻を鳴らして、手元の酒を、飲み干すのだった。





posted by 白黒ぼたん at 22:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/180919683
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
最近のコメント
余計な揉め事 by ぼたん (10/18)
余計な揉め事 by はるりん (10/18)
甘い欲求 by ぼたん (10/17)
足りないイツキ by ぼたん (10/17)
甘い欲求 by はるりん (10/16)
足りないイツキ by はるりん (10/15)
誘惑・5 by ぼたん (10/13)
誘惑・5 by A (10/12)
誘惑・5 by はるりん (10/12)
誘惑・3 by ぼたん (10/11)