2017年10月06日

残念な男







しばらくして、黒川が事務所に戻って来る。
一ノ宮に、イツキが来た事を告げられ、ふんと鼻を鳴らして、上着を受け取る。


「……雅也…」
「ああ、もう、解ってる。何も言うな。…ちゃんと考えているよ、はい、はい」



これ以上、小言を聞かされるのは御免という風に、黒川は手の平を一ノ宮に向ける。
一応、このままではいけないと、解ってはいるのだ。
それでも、『仕事』も含め、今までの生活をそう簡単には変えられない。


イツキは馬鹿で可愛くて、愛しい。
自分よりはるかに下の、好き勝手に使える駒で、貴重で、大切で、かけがえがない。
大事にして来たつもりだったが、それが意にそぐわないとなれば…、それ以外の接し方が解らない。


基本的に黒川は、一般で言う愛だの恋だの言う感情に、疎い。
持っていない訳ではないのだが…どうにも。反応が薄いし、どう表現するべきなのかも知らない。




受け取った上着を、デスクに放り、黒川は部屋の隅の冷蔵庫から缶ビールを取る。
その場で開け、傾ける。空腹の胃に染みるのか、手で腹を抑える。


痛いのは、そこではなく。





ふと一ノ宮を見ると、すでに黒川を眺めていた一ノ宮と目が合い
一ノ宮は言いたい言葉を飲み込んで、慌てて、視線を逸らせるのだった。





posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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