2017年11月07日

静かな部屋で・3








黒川が寝室に入ってから、しばらくの間。多分、ほんの数分だけれど、それは眩暈がするほど長く。
イツキは床にぺたりと座ったまま微動だに出来なかったのだが、やっと、スイッチが入ったように立ち上がる。

寝室へ向かい、伺うと、黒川はすでにベッドの中で。
眠っているのか、嘘なのか、イツキは扉の端に寄りかかり様子を伺う。




「……マサヤ。…寝ちゃった?」
「…ああ」
「何、さっきの…」



黒川は横向きで、こちらに背を向けている。
イツキは傍に寄り、ベッドの縁に腰掛け、狸寝入りの男を見下ろす。



「……マサヤって、……時々、そんな事、……言うよね。……本当のこと?」
「…さあな。…口が滑った」
「滑っただけで、…思ってる事は、本当?」
「………」



結局、肝心なところは口を噤んだまま。欲しい答えはなかなか得られない。
家出をしたり、死にそうな目に遭うと、ごく稀に覗く黒川の本心は、蜃気楼か逃げ水のようで、すぐにイツキの前から姿を消す。


それを追うのにも、もう疲れた。







「………まあ、どっちでもいいや。……どうせ、する事は変わらないんでしょ…」



半ば投げやりにイツキはそう言う。


言い終わらない内に、背中を向けていた黒川がくるりと向きを変え、イツキを捕らえた。





posted by 白黒ぼたん at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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