2017年12月13日
功労者
「……引っ越しした?」
「うん」
「え。……あのマンション、もう、居ないの?……今、どこ?」
「…新宿の方。…前から言ったり来たりだったんだけど、まあ、そんな感じ…」
イツキが派手に遅刻をした日の昼休み。
イツキと梶原は食堂で、久しぶりに一緒に昼食を取る。
久しぶりだと、話すことも聞くことも多くて、梶原はどれから手を付けてよいのか、焦る。
とりあえず目の前のかき揚げうどんを流し込んで、今日の遅刻の原因を聞く。
「寝坊したし、電車でどれくらいかも解らなかったし。…やっぱり、タクシーにすれば良かったよ…」
「…へ…え。……それって、……あの人と…、一緒って事?」
「うん」
「……上手く、……行ってるんだ?」
「んー、……まあね」
イツキは少し考えながらそう答え、笑い、自分の山菜そばを食べ始める。
黒川と、上手く行っているのだと聞いて梶原は、正直なトコロ、少し複雑だった。
黒川と仲違いしたからと言って、自分と親密になる訳でも無いのに。
つい数日前まで、思い悩み、沈んでいたはずのイツキは、いつの間にか吹っ切れたように、明るく微笑む。
梶原は、その変化のどこにも関わることが出来なかったと、少し、気落ちする。
けれど今回の件の一番の功労者は、梶原なのだと
イツキはちゃんと、解っていた。
そして、いつか、助けて貰った分を、きちんと返すことが出来ればいいと
静かに、思っていた。
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