2018年01月12日

最初の事件・5








「……なんだ?」
「……ううん。……なんでもない」
「…思い出して、その気になったか?…今は、ヤらないぞ?」
「違うよ!……………ばか」


黒川の軽口にイツキは声を荒げ、そして、顔を隠すように、黒川の胸に顔を埋める。
黒川も、それ以上は詮索すること無く、そのまま、イツキの身体を抱く。

二人にしては珍しく、服を脱ぐこともなく、黒川が出掛ける時間のギリギリまで
そうやって狭いソファに、身体を寄せ合っていた。








数時間後には黒川は事務所に赴き、細かい仕事をいくつか片付ける。
天気の話のついでのように、一ノ宮に、イツキが乱暴された事を伝えると、とたんに一ノ宮の顔は険しくなる。




「………池袋、ですかね?」




思い当たる事でもあるのか、咄嗟にそう言う。
黒川も、それは思っていたようで、別段表情も変えない。


池袋には、黒川の叔父がいる。勿論、本当の血縁ではなく、その筋の繋がりだ。
もう還暦を迎えたあたり。情に厚く、義理堅く、黒川とも良い関係を保っているのだが…
ここ数か月、叔父の身内で、多少のイザコザが起きていた。
平たく言えば跡目争いで、叔父の台頭を快く思わない若い勢力が、あちこちで争いを起こしていた。


黒川も何度か赴き、事の調停に関わっていた。
その争いが、イツキにまで被害を及ぼすとは思えなかったが…、不安材料の一つではある。



「……どうだろうな。……まだ、解らんがな。……そうじゃなくとも、あいつを狙う奴は、多過ぎる」
「…安売りし過ぎましたからね。今更、イツキ君があなたの恋人だと言っても、なかなか信じ難いでしょう。まあ、自業自得ですが…」



さらりと一ノ宮は正論を突くも、自分がそれを言ったことに気付いていない。

黒川だけが驚いた顔をして、目を丸くし、一ノ宮を見遣るのだった。





posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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