2018年03月02日

病院・最終話








「……マサヤ…」
「何だ?」
「……さっき話してた人、誰?……知り合い?」


帰りの車の中。イツキは何の事でもない風に、軽く、そう尋ねてみる。


「…叔父貴の所の…、池袋の嶋本組の、若頭補佐だ。……お前、何か、話したのか?」
「ううん。ちらっと見ただけ…」
「一応、見舞いには来たんだろうよ。…叔父貴とは揉めているようだがな。…叔父貴にも、組にも…世話になったくせに、恩を仇で返すような真似をする。……食えない奴だ」


黒川は忌々し気にそう言って、ふんと鼻息を鳴らす。
そうやってイツキに話すのは、おそらく警戒しろと促す意図もあったのだろう。

池袋の揉め事に首を突っ込む気は毛頭無いのだが、どうにも、向こうはそう思わないらしい。
叔父貴の身に万が一の事があれば黒川は出て行くのだし、そうであればその前に、諸共叩いてしまおうと考えているのか。





「……ふぅん。……そんなに怖そうな人には見えなかったけどね。
……俺、この間、ヤられちゃったのって、……あんな人なのかもとか、思った……」





半分冗談で、半分本気で。探りを入れる様に、感触を確かめる様に。
冗談めかしてイツキは笑いながらそう言い、黒川の横顔を伺う。
意外な予想だと驚くかも知れない。『目隠しをされていても、ケツで相手が解るのかよ』と、笑ってくれても良い。






「……そうかもな」


けれど、それは想定内だったという様子。
黒川は表情も変えずに、そう答えるのだった。





posted by 白黒ぼたん at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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