2018年03月23日

小話「声色」








それだけで、それが、良い事なのか悪い事なのか、大体わかる。
夜。事務所で黒川の仕事が終わるのを待っていたイツキは、黒川が応対する電話の声に、耳を欹てる。



「………いえ、それは…。は、は。……まあ、そうですが……」



歯切れの悪い物言い。時折、黒川はイツキの顔をチラリと見る。
おそらく、黒川よりも立場の強い相手。もしくは、何か大きな借りでもあるのか。
敬語とまでは行かずとも、丁寧な口調。怒鳴りつけ、電話を投げつける事もない。



「………そうですね。………では、それで…、ええ、明日」



話が付いたようで、電話を切る。
それから、小さく、「……糞」と呟き、深く、溜息を付く。

それきり、部屋は暫く静かになる。








「……イツキ」


重たい緞帳が開くように、黒川はゆっくりと身体の向きを変え、イツキを呼ぶ。

その、声色も、どんな意味を持っているのか、嫌という程、解る。





「……いいよ、別に。……明日でしょ?」





下手な嘘も言い訳もおべっかも、特に聞きたくは無くて、イツキは自分からそう言う。

黒川は、………多分、本心だと思うのだけれど、「…悪いな」と、言った。






posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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