2018年04月17日

泥沼








一仕事を終えた黒川と西崎は、また、事務所の近くまで戻り
馴染みの焼き鳥屋で、一杯、やっていた。
カウンターしかない、狭い店内。
炭と、煙草の煙。古い昭和の歌謡曲。冷で注がれたコップ酒が、身体に染みる。


程よく酔いが回って来たところで、つい口を滑らせたという風に、西崎がその事を聞く。



「……社長、最近、随分、イツキに甘いんじゃないですか?」
「……うん?」
「…へへ、まああいつ、可愛いですからね…。手元に置いておくのも解りますが…」



西崎にしてみれば、ウリで商売道具で、少なからず迷惑も掛けられたイツキが、大きな顔で黒川の傍にいるのに、不満があるといった様子。
……それを、許している黒川に、どんな心境の変化があったのか、知りたい所。

黒川は西崎をチラリと見遣り、グラスに口をつけ、ふふ、と笑う。



「まあな。…なかなか、具合がいい。…機嫌を取っておけば、言う事も聞く。
…まだ、あいつを抱きたいという客もいるし、…上手く、使わないとな…」



まるで「仕事」のために、イツキに甘くしているという風に言うのだけど、
それにしては、今日だってわざわざ遠回りして、イツキの好きな寿司屋に土産物を買いに行っているのだ。

度が過ぎてハマっていますね。とは、さすがに言えない。



「……ああ、まあ、そうですね。俺んところにも、まだ、イツキを紹介しろって言って来ますよ。…はは。
あいつは本当に、そっちは、イイですからね。泥沼って言うんですか、一度ヤったら、忘れられなくなる……」




そろそろ頃合という風に、黒川はグラスの酒を飲み干し、カウンターに飲み代を置く。
立ち上がり、掛けてあった上着に袖を通し、最後にもう一度西崎を見て、ふふ、と笑う。





「お前もな。……魔が差さないようにせいぜい気を付けろよ、西崎」





そう言って、店を出て行くのだった。






posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/183005848
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
最近のコメント
フェスタ・21 by ぼたん (12/09)
フェスタ・21 by はるりん (12/07)
フェスタ・19 by ぼたん (12/05)
フェスタ・19 by はるりん (12/04)
フェスタ・18 by ぼたん (12/03)
フェスタ・17 by ぼたん (12/03)
フェスタ・18 by はるりん (12/03)
フェスタ・17 by はるりん (12/01)
フェスタ・14 by ぼたん (11/27)
フェスタ・14 by はるりん (11/27)