2018年04月20日

廊下にて








「…あ、センセ。……お久しぶりです」


と、イツキに笑顔で挨拶をされて、驚いたのは加瀬の方だった。

あまり人通りのない廊下とは言え、加瀬はキョロキョロと辺りを伺い、誰も気に留めていないことを確認すると、壁際に身を寄せる。


「……キミ。……よく私に話し掛けられるね……」
「ね、センセ。ちょっと聞きたいんだけど…」
「……」


戸惑う加瀬の様子など全く意に介せず。
二人の間にあった出来事など、何でも無かった事なのか、それともすっかり忘れてしまったのか。



良くも悪くも、
すぐに、気にしなくなってしまうのが、イツキの取柄で。
逆に、どんな酷い出来事でも、早く消化してしまわなければ……今まで、生きて来られなかったという所。



「…梶原ってさ、受験、どうなのかな?……上手くいってるのかな…?」



一応、内緒の話をしているつもりなのか、イツキは加瀬の傍に寄り、ごく小さな声で話しかける。
加瀬より背の低いイツキは、加瀬を見上げ、……少し、近くに寄り過ぎたと気付き、小さく笑う。



「……キミは…、………まったく……。………ああ、まあ、大丈夫じゃないかね。あの子は、キミと違って、真面目に頑張っているからね」




そう言って、加瀬は、もう本当に勘弁という風に溜息を付いて、イツキを追い払うように手をヒラヒラと振るのだった。






posted by 白黒ぼたん at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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