2018年04月21日

昇降口にて







「あ、岡部くんだ。久しぶりー」
「………ぬ…、ま、…原さん?」



もう帰ろうとイツキが昇降口で靴を履き替えていると、見知った女子から声を掛けられる。
……多分、去年同じクラスだった、沼原。……以前、街中で、チンピラに絡まれてた彼女。

とても親しい訳では無いが、まったく、関りが無い訳でもない。
普通に、イツキと話が出来る、貴重な女子の一人だった。



「岡部くんも学校、来てるんだー?……受験組じゃなかったの?」
「んー。まあね。……沼原さんは?」
「あたしはもう、推薦取ってるから。岡部くん今、帰り?駅まで一緒に歩いて、いい?」




そう言って、すでに同じ方向に歩き出しているというのに、駄目だと、断る理由も見付からない。
本当は、イツキは、すぐにタクシーを呼んで、部屋まで帰ってしまおうかと思っていたのだけど……、誰か、人と一緒にいるのなら、その必要も無いのかも知れない。


先日、学校帰りに拉致られ、レイプされて以来、さすがにイツキも行動には気を使っていた。
出来るだけ、一人で出歩かない。人気のない所には近寄らない、と。
それでも、ここ暫くは、本当に何事もなく。イツキにっとてもあの事件は、多少薄らいでいた。



「…学校来てもさ、あんまり人、いなくて…つまんないよね。…このまま卒業とか、寂しいよね…」
「…そうだね」
「………梶原とは、………会う?………あいつ、今、一番大変な時だよね…」




密かに梶原に思いを寄せる沼原は、探る様にそう尋ねるのだけど、イツキにそんな乙女心が解るはずもなく。



「さっき、いたよ。ずぐ帰っちゃったけど」



そう明るく、普通に、答えるのだった。






posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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