2018年05月14日
反撃
それは一瞬の出来事だった。
イツキが、男の不意をつくように、身体を動かす。
男は、イツキが逃げ出すのだと思い、咄嗟に、扉の方向へ意識を向けたのだが
イツキが手を伸ばしたのは、扉とは反対側。その先にあったのは、赤い呼び出しボタンだった。
本来、身体の不自由な人が利用するこのトイレには、万が一の為の非常ボタンが設置されていた。
………直に、係員が、様子を伺いにここへやって来る。
「………へえ、……そんな事、しちゃうんだ…?」
男はすぐに、イツキが何をしたのかを理解した。
このままここでイツキを犯すのも、連れ出して場所を変えるのも、どちらにしても、もう時間は足りないだろう。
男はもう一度、イツキの顎を掴み、自分に向けさせる。
「……これで、逃げられたと思う?」
「………すぐに…、……だれか、………来る……」
男に睨まれながらも、イツキは震える声で、そう言う。
その唇に、男は、唇を重ねる。
男の舌は、閉じていたイツキの唇を何度もなぞり、ぬるりと、隙間から割って中に入る。
くすぐる様に歯を舐め、舌を合わせ、絡ませ、吸い上げる。
まるで恋人同士のようなキスに、イツキは頭をくらくらさせながら、どうにか、顔を背ける。
丁度その時、外側から、扉をドンドンと叩く音がした。
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