2018年06月08日

偶然








「…驚きましたよ、黒川さん。……あなたがこんな場所にいらっしゃるとは…。何か、私に、ご用でしたか?」


笠原はカウンターの黒川の隣の席に座り、白々しくも、そう言う。
黒川はチラリと笠原を見て、ふふ、と笑う。


「たまたま、立ち寄った店がココだったと言ったら?」
「…まさか。そんなに軽く入れる店ではありませんよ」
「そうだろうよ。……そんな偶然、滅多にあるもんじゃぁ…ないよな」


初対面ではないが、以前何かの折に挨拶をした程度。
煙たい、面倒な相手と認識している同士、探り合いながら言葉を重ねる。



「…ウチのイツキが世話になったそうだな、…駅で、あんたに介抱されたと言っていたぜ?」
「……ああ、……偶然…」


言いかけて、笠原は口を噤む。
……そんな偶然は、滅多にあるものではない。



「……ずい分と贔屓にされているようですね。…高校生とは…、若い」
「まあな、…良かっただろう?」
「…何がでしょう?……ああ、綺麗な子でしたが…」
「……ふん」



胸倉を掴み、殴りかかるような真似はしない。
こんな敵陣で暴れるつもりは、毛頭ない。




ふいに笠原の傍に、手下の男が寄り、耳打ちする。


「……カシラ、席の用意が出来ました」
「…ああ。……黒川さん、折角だ。…奥で遊んで行かれるでしょう?」


それが当然のもてなしだと言う風に、
笠原は賭博場のある奥に視線をやるも、黒川は見向きもしない。
静かに紫煙を吐き、言葉の綾をつく。


「カシラ?……嶋本組の若頭は、叔父貴のハズだろ?」
「………勿論。……これは、ここの店での…呼び名ですよ」
「…そうか。……てっきり若頭の座を狙って、先走っているのかと思ったぜ」







posted by 白黒ぼたん at 23:26| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
作者様、 このページの作家力 特にすごいと
感動です
Posted by suzu at 2018年06月09日 09:58
ありがとうございます!
そう言って頂けるの、嬉しいです〜

男同士の駆け引き…みたいなの
ちゃんと書ききれると良いなぁ…と
思ってます。
Posted by ぼたん at 2018年06月11日 20:55
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