2018年06月10日

一瞥








「…まさか、そんな。……はは」



と、笠原は乾いた笑みを浮かべる。
黒川は二本目の煙草に火を付ける。



「…笠原さん。俺は嶋本組のイザコザに関わる気は無い…。…あんたが叔父貴と本気でやり合うなら話は別だが…な。
あまり、ふざけた真似はするなよ?」

「……さあ、……何の話ですかね……」

「ただの忠告だ。……俺を怒らせるなよ?」




黒川はふんと鼻息を鳴らし、おもむろにスーツの内ポケットに手をやる。
…一瞬、表情を凍らせたのは、脇に控えていた手下ばかりではない。
それでも、黒川が取り出したのは、鉛色の鉄の塊でも人を傷つけるものでもなく、……数枚の一万円札で
それを、テーブルの上に、はらりと、静かに置く。




「…じゃあな、…邪魔したな」
「……もうお帰りですか?……ごゆっくりなさればいいのに…」
「…ココは、あんたの場所だろ?……人の場所に立ち入るほど、無粋な真似はせんよ」



黒川が椅子から立ち上がる。
控えていた手下が明らかに敵対心むき出しの目で黒川を睨み、身構えるも
笠原はそれを手で制する。




最後に黒川は笠原に一瞥だけくれて、店を、出て行くのだった。







posted by 白黒ぼたん at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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