2018年07月16日

無い物ねだり







昔に比べればはるかに優しくなったのだ、黒川は。
そんな事はイツキにだってよく解っている。
それでも、それに慣れてしまうと、それ以上が欲しくなってしまう。
我が儘なのだとも、無い物ねだりなのだとも、思う。

思うけれど

今までが、あまりにも……空っぽのままで過ごしてしまったために
虚ろのソコを埋める何かが、欲しくて欲しくて
自分でも気持ちを抑えることが、難しい。




「……前は、……憎しみ、とか、大っ嫌い…が、入ってたんだなぁ…」
「…何だ?」
「……何でもない。………俺、もう一杯、飲んじゃっていい?」



ぼんやりと考えていた事が、つい、口から零れてしまった。
イツキは慌てて首を横に振り、隣に座る黒川に、日本酒のお替りを、強請る。
馴染みの店のカウンター。黒川は手元のボトルを、イツキのグラスに傾ける。

「憎しみ」とか「大っ嫌い」が抜けて、空になった場所に、次に何を埋めたいのかは…まだ、イツキにも解らない。




「イツキ」
「…なに?」
「あまり、くだらない事で拗ねるな。………今はもう、……違うだろう?
……そう、酷い事は、……しないつもりだぜ?」




黒川は煙草を吹かしながら、イツキとは視線を合わせずに、そう言う。
それは、それで、ズルイのだけど




「…………わかってるよ」



今のところはこれで十分と、思う事にする。
イツキは小さく呟いて、頭を傾げ、隣の黒川の肩にもたれ掛かった。





posted by 白黒ぼたん at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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