2018年08月11日
週末熱海夜話・10
「…はは。………キミ、ずっと私の事、見ていたでしょ?」
「……え。……気付いていました?」
「勿論だよ。……お酒、零したのも見ていたよ、はは……」
突然現れたイツキに警戒しながら、そして、得も言われぬ感覚を紛らわせながら…、男は話す。
「……そうなんです。……お酒、零しちゃって…、……シャツ、濡れちゃって……」
俯いたイツキは、自分の胸元に手をやる。
濡れてもいないくせに、ネクタイを緩め、シャツのボタンを外し、隙間に、自分の指を差し入れる。
撫ぜる様に動かし、小さく溜息を付いて、シャツの端をきゅっと掴み、
男を、見上げる。
「……脱いでも、……いい?…」
「…こ、…ここじゃ、……駄目でしょ……」
「じゃ、どこなら、いい…?」
そう言って、イツキは…笑って、……男の胸に、とん、と身体を寄せた。
部屋のどこかに隠しカメラがあって、この様子を映しているのだろう。
ハグかボディタッチで良いと。それっぽく見える写真が撮れれば良いのだと。
ならば、この程度で十分だろう。
芝居は終わり。
冗談めかして、「……なんちゃって」と笑って、イツキが一歩、後ろに下がろうとすると
男はイツキの腕を掴み、前に踏み込み、逆にイツキに身体を寄せて来た。
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