2018年08月20日
週末熱海夜話・14
「よ。……おつかれ」
静かに扉が開いて、男が浴室に入ってくる。
中にイツキがいると知っているのか、そう声を掛け、軽く手桶で湯を浴びてから、湯につかる。
イツキはチラリと横目で眺め、あからさまに不機嫌な顔をして、反対側を向いてみる。
男は何食わぬ顔で、ふふと笑い、大きく伸びなどしてみせる。
「……なかなか、面白い見世物だったぜ?」
「…あ、そ」
からかう様に男はそう言う。イツキは短く答える。
しばらく、そっぽを向きだんまりを決め込んでいたのだけど…
あまりに沈黙が長すぎて、業を煮やす。
「マサヤ、どこにいたの?……俺のこと、ずっと見てたの?……助けに来てくれれば良かったじゃん!……俺、……」
「……逃げようと思えば、逃げられただろう?」
「…あそこで騒ぎを起こしてもマズイと思って、我慢したんじゃん!」
「我慢?…それにしちゃぁ、ずい分、良さそうだったんじゃないか?」
黒川はわざと煽るような言葉を吐く。
思った通りイツキは怒り、赤い顔をさらに赤くして黒川を振り返り、頬を膨らませる。
黒川は、可笑しくて堪らないと言った風に笑い、そのイツキを抱き締める。
「……なんてな。…嘘だ。……悪かったな、二人目はハプニングだったな。
………怒るなよ、イツキ」
耳元で囁く声は卑怯なほど甘く優しく、湯あたりするより熱く、のぼせ上がる。
「………マサヤの、ばか……」
イツキは、そう呟くのが精一杯。
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ほんと、マサヤのばか!
本当に馬鹿な男なんですが…
離れられないのよねーww