2018年09月14日

かけひき









実は店の中には、笠原の手下が数人、控えていた。
逃げ出したイツキをすぐに捕まえることも出来たのだが、笠原が手を挙げ、それを制した。


「……良いんですか?…カシラ」
「ああ。今日は粉を掛けただけだ。…あれは脈アリだろ?……次が楽しみだな」


笠原は手下にそう話すも、途中から笑いがこみ上げ、どうにもならないようだった。
あれしきのやりとりで揺らぎ、逃げ出す、ヤクザの女がいるかよと、可笑しくもあり、




………新鮮だった。




「……カシラ?」
「ああ、なんでもない。引き上げるか…」


そう言って、笠原は、明るく賑やかな店内を後にするのだった。











イツキは暫く闇雲に走り、後ろから、男が追って来ないかと警戒する。
とは言ってもイツキの全力疾走など、数分しか持たない。
どこぞの店先の立て看板の脇に身を潜め、肩を上下させながら、上擦った息を整える。


つい、うっかり。
笠原との…行為を…思い出すところだった。
……試してみたい……などと、考えてもいけない。
一度、そのモードに入れば、自制など一切効かないことは、イツキにも解っている。



「……して、みたい……、訳じゃないんだから。……もう!」



自分自身に言い聞かせる様に、声に出し、それごと無かったことにするように、頭を左右に振る。




そんな時に、突然、後ろから肩をぽんと叩かれて、イツキは死ぬほど驚くことになる。





posted by 白黒ぼたん at 20:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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