2018年09月16日

ジェントルマン清水








イツキと清水はタクシーに乗り、イツキの家に向かう。
本当は清水は、そのまま二人でどこかに行くつもりだったのだけど
イツキは頑なに、帰る、と言い張る。



「……ごめんなさい、先輩。……俺、今ちょっと、……そんな感じじゃなくて…」
「…梶原のアホーとは、二人で遊びに行くのにな…」
「………え?」



清水は梶原から、合格祝いの水族館デートの話など聞いていたのだろう。
半分馬鹿にしたように鼻息を鳴らし、恨めし気にイツキを横目で見遣る。


「……ごめんなさい…」
「…はは。まあ、お前もイロイロあんだろ?……落ち着いたらでいいからさ、俺とも、遊べよ?」
「……うん」
「……俺のこと、忘れるなよ?」





春には、清水はいない。
埼玉の仕事先で、寮住みが決まっている。
今生の別れではないにしろ、距離が空くことは間違いない。


湿っぽい別れの挨拶など、ガラではない。もしそんな事を言いだしたら、このまま、車は行き先を変えてしまう。




「……先輩……」
「……ああ」






最後の会話は、それだけ。
清水は、隣に座るイツキの手に、自分の手を、そっと重ねた。








posted by 白黒ぼたん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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