2018年10月04日

それは、多分







クローゼットから新しいスーツを出して、袖を通してみる。
老舗のテーラー。採寸したのは少し前だったけれど、今のイツキに丁度よく仕立ててある。
玄関の前にある大きな姿見に、全身を映してみる。
嫌になるほど、似合っていると、自分でも思う。

黒いスーツを着ると、……そういう、顔になる。ハマり過ぎていると、……思う。



このスタイルが「仕事用」になったのは、いつからだったろうか。
多分、そうと決めた訳ではなく、…これしか無かったからだと、覚えている。
最初の頃は、まだ中学生で、きちんとした服など、持ってはいなかった。
『…俺の前でみっともない恰好はするな』と、黒川が用意したものだった。


紳士服売り場にある一番小さなサイズのスーツでも、肩が余った。


黒川が馴染みにしている店で、オーダーメイドで頼むようになったのは、ずっと後のこと。








「…まあ、どんな服、着てても……、一緒だけど。……どうせ裸になるんだし…」


自嘲気味に笑って、スーツの襟を直す。
これを着て、……笠原と…するつもりは……、毛頭無いのだけど、絶対とは、言い切れない。



そうなっても、仕方が無いと、心のどこかでは思っている。




黒川に尋ねた、『大丈夫?』は、笠原に抱かれてしまう事の心配ではなくて、




むしろ、その後の、自分自身に問うたものだった。






posted by 白黒ぼたん at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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