2018年10月10日
宴席・5
黒川と笠原は酒を飲みながら、静かに、大人しく、仕事がらみの世間話をしているようだった。
割と、普通。
元はと言えば、組内部の勢力争いの余波で、イツキにまでお鉢が回って来たのだ。
その争いが収まったのであれば、この問題は、もうお終いのはずだろう。
イツキは、少し、安心して、手元のグラスに口をつける。
そして向かいに座っているホステスと、お勧めのハンドクリームの話などで盛り上がる。
そんな折、ステージで何かあったのか…、ショーの最中の女性に歓声が上がった。
思わず、イツキがそちらに目を向けると、笠原が、くすくすと笑う。
「…最後までイったかな。…ふふ、次、イツキくんも、ステージ、上がる?」
「……上がりません」
「そう?……よく、あるんでしょ?ああいうコト。……いいなぁ、黒川さんは、イイ子、持ってて…」
笠原がそう言うと、黒川はチラリと笠原を睨む。
「黒川さん、あのステージの子ね。……野田鉄筋の娘さんですよ?」
「……野田鉄筋?」
「黒川さんが飛ばした所です」
それは、先日、『フェリーチェ』での出来事。
笠原の賭場で借金を重ねていた男の…唯一の担保だった土地を、黒川が横取りして無碍にしたのだと言う。
「……結局、どうにも回らなくなってね…、娘さん、ウチで預かる事にしたんですよ。
イツキくんみたいに、売れっ子になると良いんですけどね…」
ステージでは、見世物になっていた女性が泣きながら……次の男の相手をしていた。
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