2018年10月13日

宴席・8







イツキは、ステージ上の可哀想な女性のことを考えていた。
借金のカタに預けられ、酷い仕事をさせられる…など、どこぞの誰かと似たような話。

もちろん、黒川と笠原の話も、耳に届いていた。
気配を感じ顔を上げると、とりあえず、駄目だという風に首を横に振る。



そんなもの、確認せずとも、答えは決まっているのに。






黒川は煙草の煙とともに、深いため息を付く。





「……今回の池袋の揉め事は…、俺には関係のない話だろう。ここまで付き合ってやっただけでも、ありがたく思え」

「……ノー、って事ですか?」

「当然だ」




表情を変えずにそう言い切る黒川に、イツキは少し驚く。
……黒川が自分を差し出す……事は無いだろう、と……信じてはいたけれど……
そんなものはすぐに翻され、良いように好き勝手に扱われてしまうことも……無い訳ではないと……心のどこかで思っていた…、……の、かも知れない。







黒川は、もうこんな話は終いだ、という風に、最後に大きく紫煙を吐き
煙草を、灰皿に押し付ける。

そして空になった手を、隣に座るイツキの頭にやり、そのまま自分の方へ引き寄せる。





「……こいつは、俺のだ。もう、いらんチョッカイは出すな」




posted by 白黒ぼたん at 21:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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