2018年11月11日

憎まれ口







「……話し?……なぁに?」
「………」


すっとぼけているのか天然なのか、イツキはそう答えて黒川を見上げる。


「……どうだったんだよ、……笠原は…」
「ん?……別に、普通だったよ」


イツキは、喉が渇いたと、冷蔵庫に手を伸ばす。
抱き寄せられていた黒川の手は、意外に簡単に緩んだので、イツキはそのまま缶ビールを取り、その場で缶を開ける。

すると、黒川がその缶を取り上げ、最初の一口を自分で飲んでしまう。
……イツキは少しムッとして、黒川の手からビールを奪う。




「…ずい分、あっさりしているな。…あんなに付きまとわれて、嫌だの怖いだの言っていたくせにな。
…一発、ヤって、情が沸いたか?」
「……そうかも。……そんなに酷い人じゃなかったよ」
「……は…」



イツキの言葉に黒川は絶句する。
イツキは、その様子を半分楽しんでいるようだ。
ビールを飲んで、黒川を見上げ、もう一口飲んで、缶を流し台の上に置く。


黒川の窮地を救う為に、男に抱かれて来たのだ。これくらいの事は言ってもいい。






「……でも、俺、ちゃんと帰って来たでしょ?……マサヤんとこ…」

「……当たり前だ」







お互い、一通り、憎まれ口を叩いて、ようやく

微笑み、身体を寄せ合う。





posted by 白黒ぼたん at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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