2018年11月20日
階段・5
「あ。でも。……一応、マサヤは…断ってくれたんだよ。……あれは、俺が…」
「イツキ」
向かいに座っていた清水はぐっと身を乗り出し、イツキと、額を合わせる。
今にも唇が触れる距離にイツキはドキリとする。……重ねられた手が、熱い。
「イツキ。お前が…黒川さんトコで、ちゃんと…、……ちゃんと普通にして、いられるなら…、俺はいいよ、部外者で。
……でも、辛かったり、酷い目に遭うなら…、……我慢出来ない…」
「……俺、ちゃんとしてるよ?」
「…今でも、他の、…見知らぬヤツと、……そういうコト、させられてんのに?」
清水の問いかけに、イツキは返事をする代わりに
すべてを了承しているかのような、穏やかな笑みを浮かべる。
そんな笑顔を見せられては、清水も何も言えなくなる。
一ノ宮が予約したホテルは、普通のビジネスよりは綺麗で洒落た場所だったが、生憎、バーもクラブも、ラーメン屋すら併設されておらず
黒川と秋斗は半ば仕方なく、一緒に部屋に入る。
「……色気も糞も無い部屋だな」
そう言って黒川は笑う。
部屋は、シンプルなシングルで、窓から横浜の夜景が見えるのが、せめてもの救いだった。
小さな冷蔵庫にはビールが数本と、洋酒のミニボトル。
確か、廊下の自動販売機にワンカップとスルメが売っていたな…と、黒川は思い出しながらベッドに腰掛ける。
秋斗は、壁側のデスクの、椅子に座る。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/185014521
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/185014521
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
最近のコメント