2018年12月02日

小さな紙袋







「……悪かったな…って思ったんだよ。だから、同じの、買おうかなって思って。
エルなんとか…ゼグ…なんとかって言うの?……全然知らないブランドじゃん!
何それーって思って…、大きい百貨店、3っつも回っちゃったよ。

でさ、ワイシャツなんて、高くても一万円ぐらいかなって思って…、それぐらいしか持って行かなかったんだけど……」



朝。リビングでコーヒーを飲んでいたイツキに、黒川が尋ねる。
シャツが入るにしては小さすぎる紙袋。イツキは照れ臭そうに笑う。



「…超、びっくりした。桁一つ違うじゃん!マサヤって、いつもあんなの着てるの?」
「………いや。……まあ、あれは、たまたま……」
「…ふふ。…俺、お店でキョロキョロしちゃった…。……結局、ワイシャツは無理でさ…
一番安いの、どれですかって…聞いて…、……お店の人に笑われちゃった」


そう言って笑う。笑いながら、自分で、小さな包みを開ける。
中には、一足の、靴下が入っていた。


「……ごめんなさい。とりあえず…、……これ…」










黒川は
一ノ宮に諭された事を、一応、気にしていた。
たかだがシャツを駄目にしたぐらいで、怒り過ぎたと、…思っていた。
「悪かったな」と一言、言っても良かったのだけど、先にイツキが謝ってしまい、機会を失う。



「……あ、ああ」
「パンツもあったんだけど…。パンツ一枚買うのもねー、ふふふ…」
「……今度、一緒に行くか。……お前も何か、買えばいい…」
「ええ、いらないよ!一万円のパンツなんて!」





テーブルの上の紙袋を取り、中身を覗き、馬鹿にした様子で鼻を鳴らしていた黒川は

イツキの言葉に、大いに笑った。






posted by 白黒ぼたん at 22:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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