2018年12月08日

感傷・3







仕立てたばかりの黒いスーツを着たイツキは、下を向き、肩を震わせ
壁際に身を寄せ、さらにさらに、小さく見えた。

「来い」

と言っても、身を固くするのみ。
腕を掴んで、小突くように押すと、ようやくゆっくり歩き始める。

それでも、部屋の前まで来ると、また止まってしまう。


借金のカタに俺と契約を結び、初めて、俺以外の男に抱かれる日。
…頭では納得していても、身体がいう事を聞かないらしい。
首を横に振って、涙を一粒、零す。





「……………や………」


蚊の鳴くような、小さな声。


「……お前が決めた事だろう」
「………でも……」
「四の五の言うな」



客の待つ部屋の扉をノックする。開いた隙間にイツキの身体を押し込める。
扉が閉まった後、中から、酷く騒ぐ物音が聞こえたが、知った事ではない。







互いの苦渋を飲み干すまで
この契約は続く。





posted by 白黒ぼたん at 07:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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