2018年12月12日

感傷・5







真夜中。
黒川が自分の部屋に戻ると、そこにはすでにイツキがいた。

当時のイツキは一応、親元で生活をしていたが
さすがに『仕事』の後など、まともに家に帰れない時もある。
黒川の部屋の鍵を渡されていたイツキは、自由に出入りを許されていた。



イツキは風呂場から出て来たところで、濡れた髪の毛をバスタオルで拭きながら、リビングに戻る。
チラリと黒川を横目で見遣って、小さな声で「……おかえりなさい」と言う。
今日も、他の男に抱かれに行っていた。すこぶる具合が良かったと、先方から連絡があったところだった。



黒川は冷蔵庫から缶ビールを取る。
その場で缶を開け、一口飲む。……流しには空き缶が2,3本転がっていた。イツキが飲んだのだろう。

いつ、酒を覚えたのかは定かではない。
黒川が付き合わせた事もあったし、『仕事』中、無理やり、飲まされた事もあっただろう。
美味しいかどうかは別にしても、喉の渇きを癒し、嫌な事を忘れさせるには丁度良かった。




「………おれ、今日、……ここで、寝る……」
「…ああ」


たどたどしい口調は、酒と眠気のせいだろうか。
他にも何か言いたげに、黒川を見つめていたのだけど、……もう、どうでもいいやと言う風に小さく溜息を付いて、寝室に入って行った。



黒川はリビングのソファに座り、飲みかけのビールを煽る。
部屋にはイツキの脱ぎ捨てた服が、点々と、散らかっていた。




しばらくして黒川が寝室に入ると、イツキはベッドの端に身を丸くし、背中を向けていた。
黒川は毛布を捲り、その隣に入り、


イツキの小さく震える肩に、腕を、回した。






posted by 白黒ぼたん at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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