2018年12月16日

小話「揉め事」









西崎が事務所の扉を開ける前から、中から、言い争う声が聞こえていた。
何か揉め事か喧嘩かと、恐る恐る扉を開けると、丁度、外に出ようとしていたイツキとぶつかった。


「………マサヤの、馬鹿!」


イツキは黒川にそう叫び、キッと強い目で西崎を見上げ、一応、ぺこりと頭を下げて擦れ違う。
後ろ手でバタリと扉を閉め、階段を、バタバタと駆け降りる音が聞こえた。




「……社長。……書類です」
「………ああ。ご苦労さん」



西崎は何事かと、黒川と一ノ宮の顔を見遣る・
黒川は面倒臭そうに大きなため息を付き、西崎の書類を受け取る。



「……イツキ、ですか?……また何か問題でも?」
「………いや」
「……『仕事』にゴネたとか、…他に男を作ったとか…?。…まったく、社長は、イツキに甘過ぎですぜ?」
「………ああ。………そうだな」



黒川はそれ以上は何も言わず、一ノ宮も俯いたまま視線を逸らす。
用事を済ませた西崎は仕方なく、そのまま、一礼して事務所を後にするのだった。











「…………笑い過ぎだ。……一ノ宮」


暫くしてから、黒川が一ノ宮に声を掛ける。
俯いて、顔を見せないようにしていた一ノ宮は静かに肩を震わせ、笑いを堪えていた。


「失礼。……ふふ。……さすがに…、……まさか揉め事の理由が、

『部屋に、こたつを置いていいか』

などとは…、ふふ、……話せませんよねぇ…、ふふ……」

「………ふん」


まだ笑いが止まらない一ノ宮を尻目に、黒川は、鼻息を鳴らすのだった。







posted by 白黒ぼたん at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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