2018年12月18日

昇降口で







梶原は昇降口でイツキを見掛けた。
今、帰る所なのだろうか、寒そうにコートの襟を合わせ、ふと、空を見上げていた。



「……イツキ」
「あ。梶原」
「…どうした?」


イツキは少し首を傾げる様にして、小さな笑みを浮かべる。



「……雪かな、って思ったら、違った」
「はは。……でも、降りそうなぐらい、寒いな」
「………ん」





それだけの仕草なのに、梶原は何だか胸が締め付けられそうになる。
卒業式は、もう、明日。

イツキと自分は、ただの友達以上。踏み込んだ間柄だったと思うけれど…、かと言って、何かがあった訳でもなくて……

何か、あってしまえば良かったと…、今更ながら、少し、思う。




歩き出したイツキの横顔を、梶原はチラリと、見る。
鼻の頭が赤くなり、吐く息も白い。

かじかんだ手を握り、一緒に、自分のポケットに入れてしまえと
……心で響く声が、もう少し大きければ、何かが変わったのかも知れない。








「……俺ね、学校、…楽しかった。……梶原がいて」


そう呟くイツキに、梶原は泣きたいのを我慢して「…ああ」と言うだけだった。






posted by 白黒ぼたん at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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