2019年01月16日
塩味
「イツキ。もし、俺ら、何もなくて、普通に、学校で、教室で、普通に出会ってたら…
…もっと、違ったふうに…、なってたよな……」
耳元で囁く清水の声は、解りやすく、甘く。
イツキは簡単に流されそうになるも、頭の奥は、きちんと冷めていた。
勿論、清水を、好きだった。
けれど、それを認めてしまっては、あの時の決意が無駄になってしまう。
嘘を付き通す事が、清水への、一番の誠意なのだと
そこまで、イツキが思っていたかどうかは、解らないけれど。
「……んー。どうだろう…。どうしたって、俺、……マサヤの、だし。…先輩だって、……お父さんが変わる訳じゃない。………でしょ?」
ちらりと視線だけ上げ、悪戯っぽく笑う。
その仕草で、清水も、……イツキが、「嘘」を付き通す覚悟をしていることを知る。
イツキが、こんな事にだけ頑固で、強い意志を持っていることは、不思議なくらいだったが
その芯の強さに、惹かれたのだと、清水は思う。
「……まあな。……そうだよな」
「……………ん」
「……でも、まあ、……遊ぶくらいはいいだろ?……飲みに行って、馬鹿な話で笑って…、ずっと一緒にいたって、いい」
「…………うん」
俯いたイツキの顔を上げさせ、清水は、唇を重ねる。
キスは、涙の、塩味がした。
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清水君とイツキ…お似合いでした。
〜だったら…という仮定の話しは、余計に切なくなりますね。
流されやすいイツキが清水の為に嘘をつくって事は清水の事を心から大事に思っていたという事…
切ないキスでした。
流されずに踏ん張りました。
多分、本当に
清水の事、好きだったんでしょうねぇ…