2019年01月18日
待ち人
梶原は昇降口で、イツキが戻って来るのを待っていた。
すでに約束の時間から5分…10分が過ぎ。……イツキに、何の用事があったというのだろうか。
「………俺、あいつ、…来ないと思う」
隣りに立つ大野が、溜息まじりにそう零す。
「……え?……先、帰っちゃったかな…」
「いや。……さっき。……2階の廊下歩いてんの、見た。……清水さんと」
言い終わってから、お互い、しばらく黙り込む。多分二人とも、同じことを考えていたに違いない。
そうこうしている間にも、知り合いが通り過ぎ、梶原と大野に、一緒に遊びに行かないかと誘いの声を掛ける。
それらを丁重に断り、明るく手を振り、二人はもう暫く、イツキが来るのを待つことにした。
「……やっぱり、清水さんと、…かなぁ。……イツキと清水さんって…、そういう仲だったんだろ?」
ぽつりと大野が呟く。
大野も、勿論梶原も、イツキに好意を抱いていたのに、清水のように一線超えた関係にはなれなかった。
学校の誰よりも親しく、長い時間を過ごして来たと思うのに、そうならなかった事が寂しく、腑に落ちない。
「……イツキってさ、結局、俺らの事、どう思ってたんだろうな。……調子イイ時だけオトモダチで、あとは…………、……うはッ」
愚痴の途中で素っ頓狂な声を上げたのは、イツキが突然、大野の背中を叩いたからだった。
大野は必要以上に驚き、それを見て梶原は
嬉しくて、ホッとして、泣きそうになるのだった。
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