2019年01月19日
忘れてたけど
「忘れてなかったでしょ」
イツキが帰宅したのは18時を回った頃。
卒業式があり、清水ともきちんと話し、
その後で梶原と大野と三人でファミレスに行き、デザートのパフェまで食べて来た。
…これで最後と、湿っぽくなる事もなく、どうせ近くに住んでいるんだからまた会おうぜなどと、よくある口約束をして
今までと特に変わる事もなく、バイバイと手を振り、普通に別れた。
別れてから、イツキは、ドラッグストアで買い物をして
それからタクシーを拾って、部屋まで帰ってきた。
ずいぶんと長い一日だったため、うっかり忘れかけていたけど
昨晩は黒川が、怪我をして帰って来たのだった。
「病院行った?……どうせ行ってないんでしょ?……消毒薬とガーゼと、大きな絆創膏…。
……傷、どう?……痛い?」
黒川はソファに座り、パソコンを開いていた。
こめかみには夕べのガーゼが、血を滲ませたまま貼り付いていた。
イツキはソファの後ろに回り、黒川を覗き込む。
黒川は、大した事じゃないという風に顔を逸らし、仕事の手を止め、煙草に火を付けた。
「…少ししたら、事務所に行く。……絆創膏だけ変えてくれ」
「はーい」
「……くだらんガッコーも、……今日で、終いか」
「……ん」
そう言って黒川は、笑う訳でも、馬鹿にしたような鼻息を鳴らすのでもなく、
静かに紫煙を、吐き出すのだった。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/185405758
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/185405758
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック