2019年01月23日
記憶の澱・2
イツキが黒川と出会ったのは、イツキがまだ12歳、…中学一年の頃だった。
父親の仕事の取引相手として、顔を合わせる程度だったが、その数回後には
騙され、呼び出され、乱暴された。
よくよく考えれば…考えなくとも、酷い話だと思う。
それ以降も、親の仕事が無くなるだの、替わりに妹を犯すだの、理由を付けてはイツキを呼び出し、好き勝手に扱った。
「……犯罪、ビョーキ。……マサヤ、変態………」
イツキはソファでまどろみながら、そう呟いては、独りクスクスと笑う。
笑い話にするには、かなりの時間と、気が遠くなるほどの苦悩があったはずだが
イツキはそれらもろとも、ビールと一緒に飲み込んでしまう。
むしろ、そうでもしないと、イツキは生きて来られなかった。
中学二年の冬。
父親は、黒川とは別の組織との仕事で多額の負債を抱え、焦げ付かせ
もう自身の保険金でしか償えないという瀬戸際で、黒川がその仲裁に入った。
肩代わりした借金は、イツキが黒川の元で働いて返す「契約」だった。
一体、いくらのレートで、何度男に抱かれれば、全額返済出来るものだったろう。
実際、その頃の事は、……あまりに酷すぎて…イツキもよく覚えてはいない。
ただその頃の黒川は、確かに、いつも辛く厳しく、イツキに接していた。
『………それは、あの人のプライドが…許さなかったのね』
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