2019年01月26日

記憶の澱・4







肩まで掛かるストレートの黒髪。スレンダーな美女はリョーコという名前だった。
リョーコは以前、……黒川がイツキと出会う前に、黒川と、男女の関係だったようだ。
マンションの鍵を持ち、半ば、同棲していたようだが…、その辺りの詳しい事は、


今も、イツキは知らない。







『……ああ、やっぱり、あった……』

リョーコはローボードの引き出しの、裏側から、探し物を見つける。
それは小さな赤い石のついた指輪で、無くして、ずっと気になっていたものだと言う。
リョーコは、すでに、イツキの事を知っていた。
黒川の身勝手に付き合わされ、人生を振り回されている少年に、心底、同情していた。



『……イツキくん、でしょ?……大丈夫?……黒川、酷い……、よね?』



自分も、黒川と一緒にいて、かなりの苦労を負ったのだろう。

それ以来、リョーコはイツキに親身に接し、…食事や身の回りのことや、ごくごく普通のことを気にかけ…
…セックスの後の身体のケアや、…そう言った事の知識を…、与えてやるのだった。








『………もう、無理、おれ、無理。………だめ、………しぬ……』



誤魔化し、誤魔化し、どうにかこんな生活を続けていても、たまに、どうにもならない時もある。
……複数の男に囲まれて、裸のまま変な恰好をさせられて、痛いとか恥ずかしいとか、もうそんな言葉では足りないくらい……すごい事になって、ぐちゃぐちゃになって。

終わって、部屋に戻っても、イツキは落ち着く事が出来ず、泣き喚き錯乱する。
リョーコはイツキの傍にいてやり、子供をなだめる母親のように、頭を何度もさする。




この頃のイツキは、どれだけリョーコに助けられたか知れない。
胸にすがり、泣き、抱き締められたまま、目を閉じ、暫しの安堵を得る。

本当に、この頃に、リョーコの存在が無ければ
イツキは、壊れてしまっていたかも知れない。




posted by 白黒ぼたん at 21:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
リョーコさん、イツキの事を救ってくれた存在なんですよね。
リョーコさん、ちょこっとしか出てこなかったので、黒川さんとどういう感じでお付き合いしていたのか知りたいです。指輪も気になるし。
あの黒川さんと付き合っていた人だから、強さもあり、儚げでもあったのかもしれないですね。リョーコさんの過去も是非!
Posted by はるりん at 2019年01月27日 09:22
今までチョイチョイしか書いていなかったので
今回のお話で少し出せればーと思っています。
黒川の女、って……ねぇ…!?
Posted by ぼたん at 2019年01月29日 22:46
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