2019年02月09日

記憶の澱・おまけ








事務所のあたりをプラプラ、二人で歩いている途中
ふと、イツキが目を止めたのは、宝飾店のショーウィンドウ。
別に、本当に、ただ何気なく視線をやっただけだったのだが
何故だか黒川も気付き、ふふと小さく笑う。



「…欲しいのか?」
「………えっ、……何?」
「この間から、指輪がどうの、言ってたからな…」
「…指輪?……いらないよ!……ただ、見ただけだよ、キラキラしてたから……」


黒川は冗談半分でイツキをからかう。
イツキは妙に気恥ずかしくなって、無理に顔を背けて、その場から立ち去った。



将来を誓い合った男女でもあるまいし。
なぜ、そんな物を黒川に買って貰わなければならないのか、意味が解らない。








しばらくそのまま街中を歩き、知り合いの店に顔を出して、事務所に戻ろうかという頃。

今になって黒川は、一瞬でも、イツキが指輪を欲しがっていると思った自分に、苛立つ。
冗談してもタチが悪い。そんな仲でもあるまいし、気色が悪い。

それとも、口実を付けてでも、何かの形を残して置きたいとでも思っているのか。
何を血迷ったかイツキ相手に、将来を、約束するとでも言うのか。






「……あ、マサヤ、…あれ…」
「…なんだよッ」
「ハミガキ粉、切らしてた。買ってくるね」



つい不機嫌に声を荒げた黒川だったが、イツキはまるで、それに気付くこともなく
笑って、コンビニを指さして、一人で走って行ってしまった。






posted by 白黒ぼたん at 21:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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