2019年02月21日

歓迎会・4







「じゃ、お疲れ様です」


そう言ってイツキは頭を下げて、歓迎会の席を後にする。
もっとも、酒は一滴も入れていないのだ。これ以上、この場にいても意味は無い。
社長と奥方も、お先にと帰る。
まだ飲み足りないのか、林田とミカだけ残り、最後にもう一杯とビールを注文する。


「……ちょっと変わった子だね、イツキくんって…」
「そーですかー?ただの内気なオタクなんじゃないですかー?」
「いやいや。…まあ、真面目に働いてくれるなら、いいよね。ハーバルさん、来月の物産展に向けて忙しいでしょ?」
「そーなんですよー。もー、大忙しですよー」


ミカはジョッキを煽りながらくだを巻く。ずい分、酔いが回っているようだ。
林田はまだ余裕があるようで、……失礼ながら、こんな地方の、こんな小さな会社に、わざわざ勤めに来る少年が、気になる様だった。
……犯罪、などに関わっていなければいいが……と、心配する。


「………林田さん」
「え、何?ミカちゃん」


ふいに、ミカが声を潜め、身を乗り出し、顔を近づける。
訳あり少年の話か、それとも、何か別の色っぽい話かと、林田も顔を近づける。



「………ミカ、……気持ち悪い……」




そう言って、ミカは立ち上がり、トイレへと駆け込むのだった。









駅前から一旦、作業場に戻る方向。その先に少し行ったところに、会社が在庫置き場で借りているアパートがあって、その一室にイツキは寝泊まりしていた。
新しくも、綺麗でもない。普通の木造アパート。
暗い、独りの部屋に帰るのかと思うと憂鬱で…、イツキは大きなため息をつきながら、ギシギシと鳴る階段を上がった。




こんな状況になったのには、当然、理由がある。






posted by 白黒ぼたん at 20:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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