2019年02月22日

夜逃げ








事が起きたのは3月の終わり。
無事に高校を卒業し、束の間の穏やかな日々を過ごしていた時だった。

それは、あまりにも突然だった。



事務所から部屋に戻って来た黒川はいつになく険しい顔をして、イツキに、すぐに出かけるから支度をしろと言う。
藪から棒に何を言い出すのかと、イツキが驚いていると、とにかく2,3日泊まれるだけの荷物を作れと、大きなバッグを放り投げた。
訳も解らず、取りあえず、下着やシャツや、最低限のものを掻き集める。



「……何?……夜逃げ?」



車に乗り、イツキは半分冗談めかして尋ねるも、黒川はまだ黙ったまま。
もしかして、本当にそうなのかも…と、イツキは少し、心配になる。



「………大丈夫だと思うが……」


都内を抜けた頃、ようやく黒川が重い口を開く。


「光州会が代替わりしてな。新しく頭になった高見沢が厄介でな……」
「……光州会って…」
「お前の親父が揉めた所だ。…先代との間で、もうカタは付いているんだが…、今になって、ちょっとな……」




さも嫌な話をするように、黒川は顔を顰め、溜息を付く。

けれど、イツキの杞憂は、黒川の比では無かった。






posted by 白黒ぼたん at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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